確定申告は必要?確定申告を行う際の養育費の取り扱いについて
公開日:2023/05/15 最終更新日:2023/04/12
離婚ではしばしば子どもの養育費が問題になることがあります。養育費には、養育費の取り決めや養育費の算定など、さまざまなものを検討する必要があります。その中で忘れがちになるのが確定申告についてです。本記事では、養育費を受け取っていた場合や養育費を支払っていた場合の確定申告の取り扱いについて解説していきます。
確定申告時に養育費は所得として計算すべきか
確定申告とは、1暦年(その年の1月1日からその年の12月31日まで)に獲得した所得について納めるべき税額を自分で計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に収めるべき税額を記載した申告書を税務署に提出することをいいます。所得に対して税金の取り扱いが規定されている所得税法では、個人が得た全ての所得に対して課税するという大原則があります。
しかし、所得税法には社会政策的配慮、担税力(※2)の考慮、二重課税の防止などの理由から課税対象とすることが適切でないと認められる所得もあり、これを「非課税所得」といいます。
養育費は、この非課税所得に該当するというわけです。非課税所得には、所得税法の規定によるもの、租税特別措置法の規定によるもの、国民健康保険法などのその他の法令の規定によるものがあります。
養育費の非課税所得の根拠については、その他の法令の規定の“学資金および扶養義務を履行するために給付される金品(所得税法9条1号15項)”に該当します。養育費は、子どもの学費や扶養を行うために支払われるお金で、その目的のために支払われている限り税金はかかりません。そして、非課税所得は、課税上当初からその所得がなかったのと同様に扱われるため、確定申告の手続きは不要となります。
なお、非永住者(※2)や非居住者(※3)についても、確定申告の手続きは不要です。
しかし、注意しておきたい事項もあります。それは「贈与税」の問題です。養育費を全額貯金している場合や、株の購入費用に充てるなどの場合には、贈与税の対象となる場合があるので注意してください。
また、数十年分の養育費を一括で受け取った場合にも贈与税の対象となる可能性があります。相手が一括で支払うとした場合には、一括でもらう方がおすすめです。これは、もし相手が病気やケガで働けなくなったり、リストラや再婚などが原因で養育費の支払いが停止される可能性があるためです。
(※1)税を負担できる力のこと。「担税能力」ともいい、税金を納めることができる能力のこと。
(※2)国内(日本)に住所を有する個人、または国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下であるもの。
(※3)日本に住所や1年以上居所がない個人をいう。
養育費を支払うと扶養控除は受けられる?
扶養控除は、所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。養育費も適用要件を満たした場合には、この扶養控除を受けることができます。とても大切ですので、しっかりと確認してください。
扶養控除の適用要件について
扶養控除の適用要件となっている控除対象扶養親族とは、扶養している子どものその年の12月31日現在の年齢が16歳以上で、以下の4つの要件すべてに該当する人をいいます。
①配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
②納税者と生計を一にしていること。
③年間の合計所得金額が48万円以下であること。
④青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと。
扶養控除の金額について
扶養控除の金額は、扶養している子どもの年齢などにより異なります。
一般控除対象扶養親族(※4)の場合の控除金額は38万円です。特定扶養親族(※5)の場合の控除金額は63万円です。老人扶養親族(※6)のうち、同居老親等(※7)の場合の控除金額は58万円、同居老親等以外の場合の控除金額は48万円となります。
(※4)扶養される対象者のその年の12月31日現在の年齢が16歳以上の方。
(※5)扶養される対象者のその年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の方。
(※6)扶養される対象者のその年の12月31日現在の年齢が70歳以上の方。
(※7)老人扶養親族のうち、あなたや配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、あなたや配偶者との同居を常としている方。なお、老人ホームなどへ入所している場合は対象外となる。
扶養控除の申告方法について
主に個人事業主の方は、確定申告を行う必要があります。確定申告書の様式には「確定申告書A」と「確定申告書B」の2種類がありますが、個人事業主の方は「確定申告書B」を使用します。
確定申告書には、第一表と第二表で構成されており、第一表では「所得から差し引かれる金額」の「扶養控除」欄に、扶養控除の合計額を記入し、第二表では「所得から差し引かれる金額に関する事項」の「扶養控除」に、控除対象扶養親族等の情報を記入する必要があります。どちらの記載も忘れることがないようにしてください。
サラリーマンなどの給与所得者の場合は、確定申告ではなく「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」を、給与の支払者へ提出することで扶養控除を受けることができます。提出期限は、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出する必要があります。
なお、当初提出した申告書の記載内容に変更があった場合には、その変更後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに、変更の内容などを記載した申告書を提出する必要があるため、提出期限にはご注意ください。
扶養控除に関する注意点
扶養控除を受けるにあたって、いくつか注意点があります。しっかりと確認してください。
「納税者と生計を一にしていること」は同居を要件とするものではない
扶養控除の適用要件のひとつに「納税者と生計を一にしていること」がありますが、ここでいう「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。
子どもの養育費を毎月送金しているような場合には「生計を一にする」といえますので、扶養控除を受けることができます。同居していないからというだけで、扶養控除を行っていない方は、今後しっかりと行ってください。
養育費の扶養控除は親権者または養育費を払っている親のどちらかしか適用できない
たとえば、離婚した両親それぞれが、同じ子どもを控除対象扶養親族にできるのかというと、どちらか一方の親しか扶養控除は適用されません。
仮に、両方が扶養親族として申告書などを提出した場合、先に提出した方の扶養控除が認められ、その提出日が同一であるなど決められない場合には、所得の多い方の扶養控除が認められることになります。
まとめ
今回は、養育費の確定申告の取り扱いについてご紹介しました。養育費を扶養控除する場合には、適用要件がありますので、適用要件に該当するかなど確認し、しっかりと税金対策を行ってください。離婚に限らず子どもには、両親に対して扶養料の請求権があります。離婚で親権者が決まると、親権者でない親は親権者に対して養育費を支払わなければなりません。
中には「離婚を受けてくれるなら、養育費はいらない」「子どもと同居できないなら、養育費は負担しない」などと取り決めることもありますが、養育費を負担してもらうのは子どもの権利です。親の都合でそれを奪わないでください。養育費の不払いなどでお困りの場合には、養育費保証サービスを活用することも大切です。