養育費は一括で支払ってもらえる?一括請求するときのポイントとは
公開日:2023/04/15 最終更新日:2023/02/24
愛し合った二人が夫婦となり、子どもを授かったとしても、さまざまな事情から離婚しなければならないことがあります。その場合、授かった子どもを養う責任は、夫婦共にあります。その責任のーつとして発生するのが、子どもが自立して生活ができるようになるまでに必要な費用である「養育費」です。今回はその養育費について解説します。
養育費の一括請求は同意が得られれば可能
養育費について聞くと、多くの方が「子どもが自立するまでに必要なお金のこと」と、養育費の意味については理解されている方が大半です。ですが、その支払い方法についてはどうでしょうか。大抵の方が毎月もらうものだと認識されていると思います。
養育費は、未成年である子どもが成長していくために日々必要となる費用であるため、定期的(毎月など)に給付されるのが一般的です。しかし、養育費を支払う側に金銭管理の面で不安があった場合、親権を持ち子どもと一緒に生活をしている側は、「今後先々、養育費の支払いが遅れたり、払ってもらえなくなるようなことがあるのではないか」という不安を抱えているという声をよく耳にします。
こういった場合、親権を持つ側からすると、払ってもらえなくなるのではという不安を抱えたくないので、一括請求を希望するケースがありますが、先述した通り、養育費はあくまでも「定期的に給付されるぺき金銭」であるため、片方だけが一括請求を希望しても認められません。しかし、親権を持つ側と養育費を支払う側の双方が養育費の一括払いに合意した場合には、一括で支払ってもらうことが可能となります。
養育費を一括請求するメリット
もしこの記事を読んでいる方のなかで、実際に養育費の一括請求に踏み切ろうとしているのであれば、受け取る側・支払う側のどちらであっても、メリット・デメリットを踏まえて判断しなければなりません。ここでは、養育費を一括請求する場合のメリットを受け取る側と支払う側に分けて解説します。
まずは、受け取る側にとってのメリットです。ひとつ目は、「養育費が支払われるかを悩む必要がない」です。養育費を受け取る期間は長期に渡るため、指定の日に入金がなかったりすることもあります。しかし、一括請求であればそのような悩みが解消されます。
ふたつ目は、「生活設計がしやすくなる」です。養育費を一括で得た場合、多額のお金が手元に入るため、今後の生活設計が立てやすく、早い段階で生活を安定させることができます。
では、支払う側のメリットは何があるのでしょうか。ひとつ目は、「毎月支払う負担が省ける」です。いくらかわいい子どものためとはいえ、毎月支払わなければならないというのは精神的な負担となります。一括払いをすることでその負担をなくすことができます。
ふたつ目は、「収入変動等の影響を受けない」ということです。この先の5年10年先まで、安定的な収入を確保できるかどうかの保障はできません。最初から一括で支払ってしまうことで、将来的な不安を考えずライフプランを考えることができます。このように一括請求によるメリットは、双方にあるといえます。
養育費を一括請求するデメリット
養育費を一括請求することにより得られる双方のメリットを紹介しましたが、当然、メリットだけではありません。ここでは、一括求によるデメリットを受け取る側、支払う側に分けて紹介します。
まずは受け取る側のデメリットです。ひとつ目は、「一括請求合意後の増額請求が困難」です。支払う側の収入が大幅に上がった場合など、事情によっては本来得られるはずだった養育費も一括請求で双方合意した後では、追加請求が困難になる可能性が高まります。
ふたつ目は、「一括払いにしたことで受取総額が低くなる可能性がある」です。一括払いの場合、双方の合意が必要になるため、同意を得るためにやむを得ず受取総額を下げなければならないという事態が発生しかねません。
続いて、支払う側のデメリットです。ひとつ目は、「一括請求合意後の減額請求が困難」です。本来であれば受け取る側が再婚し、子どもと養子縁組をしたり自身が再婚したりなど、扶養家族が増えた場合などは減額請求の対象となりますが、一括払いした養育費を返還してもらうことはできないため、結果的に支払総額が多くなってしまうことがあります。
ふたつ目は、「多額の出費が発生する」です。子どものためとはいえ、一括払いをするということは子どもが自立するまでの数年から数十年分の費用を一度に支払うことになります。そのため、それなりの支払金額なので、自身の安定した生活基盤を失うことにもつながりやすくなります。このように、一括請求には双方にとってメリットもあればデメリットもあるため、その点を踏まえ慎重に検討する必要があります。
養育費を一括請求するときに注意すべきこと
ここまでお読みいただいたうえで、「やっぱり一括請求を希望する」という考えになった方には、最後に注意しなければならないポイントを紹介します。そのポイントにひとつ目は、「内訳を明確にする」です。一括払いでは必ず総額だけではなく、項目を細かく分けた内訳を明確にしておきましょう。
よくある例として、学費の引きあがりに応じて養育費を追加で請求するにしても、受け取った総額のうち、学費に該当するのはどのくらいなのかを明確になっていなければ、相手も追加に応じてくれません。養育費全体のうち、学費はいくらとして算出しているのかを明確にすることで、大幅なずれが生じた場合も安心して対処することができます。
ふたつ目は、「話し合いで解決し、裁判に持ち込まないこと」です。先述した通り、養育費は「定期的に給付されるべき金銭」であるため、双方の合意がなければー括請求は認められません。裁判所であっても養育費は分割払いが原則となっているので、話し合いがまとまらない状態で、裁判に持ち込んだとしても良い結果は得られません。あくまでも、夫婦間での話し合いを大前提として合意を成立させる手段を考えましょう。
まとめ
先行きが不安な近年、養育費の問題は大きいものです。離婚後の子どもとの生活をいち早く安定させるために、一括請求という選択にこだわる気持ちもわかりますが、こだわりすぎるあまり、受取総額が大幅に減額されてしまっては意味がありません。
一括請求は、あくまでも双方の同意が前提となりますので、子どもの将来のために、最善の方法は何かを最優先に考えたうえで、メリットとデメリットを踏まえながら検討してください。